受験の思い出−挫折とその後


大学受験の季節です。受験生の皆さん、がんばってください。
この季節になると思い出すことがあります。


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40数年前、私も受験生でした。
京都のA大学を目指して勉強していました。
ところが受験前の12月、父が亡くなりました。半年ほど前に体を壊
してあっけなく。


父の残してくれた少しの財産と退職金で、大学には行けることになり
ました。しかし、傷心の母を残して京都に下宿することは考えられず、
経済的にも無理だったので、あきらめて地元の大学に。


いろいろ有りました。父が死ぬということはやっぱり大変なこと
でした。
学費と小遣いはアルバイトで稼いで4年間がんばりました。


バイト先で、今の女房と知り合いました。


大学を卒業してすぐ就職。


その彼女と結婚しました。


長男が生まれました。


それから18年。長男が大学受験を迎えていました。


そんなある日、長男が言います。
「京都のA大学を受験したい」


驚きました。昔の思い出は誰にも話していなかったのです。
私は平静を装って言いました。
「ああ、合格したら行かせてやるから、がんばれよ」


そしてなんと、合格してしまいました。


さっそく下宿探しに京都へ。
初めてA大学の校門の前に立ちました。
立て替えたであろう新しい門柱に、古いブロンズの名板。


・・・ここがあのA大学・・・


名板の上に手を置くと、なんだか目が潤んできました。
息子に気づかれないように、顔をそむけていました。